甘いものが好きだ。今風に言うとスイーツかな。小さい頃は代官山ヒルサイドのレンガ屋と目黒のモンドールでケーキを食べていたはず。両方とも今は無いみたい。味はさすがに覚えていないが、ケーキが好きだったのは覚えている。
その後ずっと特にケーキが好きという風には思わず、次にケーキ好きを自覚したのは大学に入ってからだと思う。朝来野という大学の友人にケーキ本を紹介され、むさぼるように色々なお店に行ったものだ。まだイル・プルー・シュル・ラ・セーヌが代々木上原にあった頃である。
その頃から良く行っていたお店が、広尾のクレモン・フェランだ。店のカウンターの後ろには、お子さんが酒井シェフを描いたような絵があり、とても微笑ましいお店だった。ケーキの味は絶品だが、どこか優しく懐かしい、そんなお店だった。坂上という小中高の友人の結婚式の参列者へのお返し(?)がクレモン・フェランのプチマドレーヌだったこともあり、一時期は顔を覚えられるほど行ったものだ。誕生日など、うちの記念日ケーキはいつもあそこだった。22年も営業したそうだが、そのうち18年くらいは通ったことになる。
そんなクレモン・フェランが、昨年の12月に突然閉店した。いや突然なのではなく、忙しかったりしてご無沙汰だった隙に閉店になってしまったのだ。その日のmixiには「大好きだった親戚のおじさんの訃報を聞いたような、そんな気分。当分、立ち直れないかも。」と書いてある。とにかく、ショックだった。
一体、なぜ閉店になってしまったのか。イル・プルーがWebサイトまで出すご時世なのだから、やはりケーキ業界は厳しく、資金繰りに行き詰まってしまったのか。いやあの味で人気が出ないわけがない。しかし良心的な価格だったし、最近は結構空いてたしな。いやそれはオレが行く時間帯が閉店間際だからだ。など色々と考えながら店の前を通るが、やはり復活はしていない。今日も前を通ったが、なんだかメキシコ料理か何かになっていた。見る度にショックだ。
しかし、ふと思い立ち検索してみると、酒井シェフは広尾のお店を閉めて(多分ご自宅かな)アトリエを開き、奥さんとのんびりお菓子作りを楽しんでおられる模様。息子さんは海外にいらっしゃり、リヨンのコンテストで4位に入賞したとか。もう誕生日にクレモン・フェランのケーキが食べられないのは同じだが、何だか嬉しい。少し涙が出た。
ほのぼのしたら元気が出た。でも、自分が作るものがこんなに愛され、自分の去就をこんなに心配されるなんて、本当に凄いと思う。ここのところ悲しいことがあって内心はあまり元気がなかったのだが、明日から少し元気に頑張れそうだ。
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